おそらくはそれさえも平凡な日々

何故僕はエンジニアとして対外発表をするのか

僕は本来、人前に出て積極的に話そうとは思わないし、目立たずにおとなしく引きこもっていたいみたいな気持ちがある。潔癖な部分もあるので、プレゼンスばかり高くて技術力がないような中身が無い人間になりたくないし、そうなったら死ぬしか無い、みたいな気持ちもある。それなのに何故、ものすごく技術力があるわけではない自分が対外発表をするのか。

それは元はと言えば対外発表をするような側に行かないとエンジニアとして生き残れないのではないかという危機感があったからです。

Shibuya.pmの衝撃

初めて参加したShibuya.pmは#10だった。その頃の僕は一企業のよくある何でも屋の1人システム担当であり、開発のメインは前担当者から引き継いだレガシーASPだった。そしてつぶしの効く技術を習得したいと思いPerlを学び始めた頃だった。そしてPerlがそこそこ書けると手応えを感じ始めているところだった。

ところが、Shibuya.pmの話が半分以上わからない。少し衝撃を覚えたがその時はそんなもんかな、とも感じた。

ちなみに、このShibuya.pmは牧さんがJPAの立ち上げを宣言した回だった。コンテキストがわかっていなかった当時の僕には、その背景や意義が正直ピンと来てなかったのだが、今になるとこれがどれだけ意義のあることだったのかということがよく分かる。歴史的な発表に偶然立ち会えたことに非常に嬉しく思う。

程なくして僕はSIerに転職する。転職先で最初の開発はPHPでの開発だったが僕はすぐに結果を出した。思っていたより周りのレベルは高くなく、僕はWebアプリケーション開発において社内でかなり優秀な方に分類されるようになった。そして、社内の誰よりも早く自分は成長しているとも感じていた。

そこでやってきたのがShibuya.pm #11である。

この時はテーマがテーマだったこともあるが、完全にチンプンカンプンだった。

これは衝撃だった。ヤバイなと思った。

自分は社内では周りより早く成長しているつもりだったが、そんなのがお話にならないくらいにShibuya.pmの壇上にいる人達は遥かに高い場所にいて、はるかに速いスピードで成長している。tokuhiromが年下であることを知ったのもこの頃だと思う。

彼らと同じ場所に行かなくてはエンジニアとして生き残れないのではないか、遅かれ早かれ淘汰されるのではないか。そう思った。ただどうすればそこに行けるのか分からなかった。だから彼らを真似しようと思ったし、自分も発表する側に回りたいと思った。

再転職と発表機会の増加

SIerには2年所属し、その後運良くカヤックに転職することができた。それから対外発表がやりやすくなった。対外発表をするのが当たり前みたいな雰囲気だったし、プロジェクトの話をしてもOKだった。typesterとかfujiwaraさんが「え、発表しないの?」とか煽ってくる。チャンスだと思ったので積極的に発表するようになった。YAPC::Asiaは2012年にデビューした。

発表をしてみるようになると、メリットだらけだということが分かった。

発表をすると名前を覚えてもらえるし、逆に自分よりすごい人に色々なことを教えてもらえる。fujiwaraさんが「情報を発信する人のもとに情報が集まる」ということをよく言っていて、それを実感できた。これは対外発表にかぎらず、ブログを書いたりGitHubにソースを乗せたりすることもそうだ。

また、正当なプレゼンスを発揮して、名前を覚えてもらうとオープンソース界隈でも活動しやすくなる。pull requestを送ってもすぐにマージしてもらえることも増えるし、自分の意見も通りやすくなる。よりOSS活動がしやすくなるし、自分自身が書けるOSSも増える。これはOSSを使って開発する事を仕事にする上では大きなメリットであることは疑いようがないだろう。

OSS活動や対外発表におけるノウハウ流出リスクについて

OSS活動や対外発表をすることでノウハウ流出リスクはないのか?という問題に関しては語り尽くされている。よく言われることとして以下の様なことがあるだろう。

  • ノウハウをオープンにしないことによりガラパゴス化してしまい、逆に技術的に取り残されるリスクの方が大きい
  • Webサービス企業はソフトウェア資産よりサービスが重要。サービス開発速度や、運営・運用力が大事

それに加えて思うのが、ハッカーと呼ばれる人たちが新しいものを生み出すものすごいスピードだ。

例えば、typesterやtokuhiromは「このソフトウェア便利だと思ってたら、昔自分が作ったやつだった。作ったことを忘れていた」ということが本当にあるらしい。

彼らは過去作ったものを忘れるほどに、新しいものを生み出し続けていて、過去に作ったものに執着していない。とにかくCoolだ。それに比べると、昔作ったものにしがみついて食いつなぐような、例えばパテントトロールのようなことが余計にかっこ悪く思えてしまう。

とにかくノウハウが流出しようがなんだろうが新しい価値を生み出し続ければいい。それだけのことだ。

彼らにはまだまだ及ばないが、これまでブログを書いたりGitHubにコードを上げたり、対外発表をしてきた中で、彼らやその他多くのスーパーなエンジニアが身近になり、色々なことを学ばせてもらい、世界が広がった。そういう活動をしてきて本当に良かったと思う。そんな風に僕を成長させてくれたスーパーなエンジニアの人たちには本当に感謝している。

はてなの東京オフィスのチーフエンジニアとして活動をさせてもらっています。そして、今年もYAPC::Asiaで発表したいと思っています。

Mackerel開発におけるScalaとGo、そしてPerlというトークで応募しています。今年は絶対に発表したいので、ソーシャル等での後押しをよろしくお願いします。

そして、YAPC::Asiaは実は発表の敷居がとても低いカンファレンスです。登壇者全員が物凄いわけではないし、僕みたいな割と普通のエンジニアもいます。そして、普通のエンジニアの生の体験こそがこういうカンファレンスで求められていることの一つでもあるのです。人それぞれチャンスの掴み方は色々あるかと思いますが、YAPC::Asiaで何らかの発表をして何らかの糧を得たいと思いつつ迷っているのであれば、絶対にトークに応募したほうがいいと思います。

rebuildfmでnaoyaさんが「カンファレンス登壇者はみんながスゴイわけではないし、自分も大したこと無い」というようなことをおっしゃっていましたが、まあnaoyaさんは明らかにスゴイ人なわけですけど、言っているニュアンスはすごく良く分かります。cho45のYAPC 初心者ほど YAPC にトーク応募すべき10の理由も合わせて読むといいと思います。

また、はてなはエンジニアにかぎらず全方位に人材を募集しています。ご興味があれば是非ご応募ください。東京オフィスのエンジニアもまだまだ少ないので僕と一緒に働きたい方は是非。

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2015-06-01T13:10:36+0900

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