2006年7月20日
カッコウはコンピュータに卵を産む
前回、クリフォードストールをぼろくそに言ってしまったので、けなしっぱなしでは流石に失礼なので、ちょっと良いほうの本も紹介してみよう。この本は、お勧めである。上下分冊だが、内容が軽いので、ボリュームはあまり感じられない。
この本は、筆者が管理しているネットワークで、ハッカーの足跡を見つけてしまったところから話は始まり、追跡を続けているうちに、結果的に歴史的なハッキング事件に立ち会ってしまうという実話を書き留めたものだ。コンピュータの専門化ではなく、本業は天文学者の筆者がハッカーを追跡していくのはなかなか痛快でもある。
ハッキングなんて概念がそもそもないに等しく、それ自体に違法性がまったく問うことができず、そのせいで追跡を途中で断念しかけたなどと、当時のインターネット黎明期の社会状況もなかなかよく映し出されていて、そこも興味深い。
正義感に燃える性質でもない筆者が、半ば意地になってハッカーを追跡しているさまなど、ところどころに感じられる筆者の人間臭さも良い味を出している。
Unixに少し触れたことのある人なら、ニヤっとするような描写がでてくるのもエッセンスになっている。コンピュータに詳しくない人もそういったところは読み飛ばしてしまえば、ストーリをつかむのに苦労はしないと思われる。
ちょっと意地悪く読むと、翻訳が微妙なところが結構あるね。こういう最新(当時)の技術用語が多く出てくるストーリーの翻訳は難しいよなぁと感じたね。技術者が訳せるものでもないし、普通の翻訳家単体だと荷が重いだろうから。
考えてみたら、この本を読んでから「インターネットはからっぽの洞窟」を読むとまだ、楽しめる要素はあるね。筆者のゴーストライター疑惑の話とか。でも、この本を読まないで「インターネットは…」を読むとそれこそまったく楽しめる要素がないね。単体で面白みを持たない本には何の価値もないわけだけど。
ちなみにこの本は、アマゾンなんかで買わなくてもよい。そこらのBookOffに行けば100円で転がっている。