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2007年7月 2日

GoogleとYahoo!とテレビのチャンネル数

Yahoo!JAPANのページビューが世界一位になったみたいですね。私の職種柄、職場では、大小さまざまなIT企業のWEB広告やSEO担当営業と話す機会がままある。どこのIT企業の営業の方々も、「これからGoogleもどうなるか分かりませんよ?」/「これからGoogleは日本でも伸びてきますよ」という論調だが、はっきり言って私はそれを信じていません。

日本でYahoo!が使い続けられる理由に以下のような日本人の特性があげられると思います。以下は箇条書きにしましたが、実際はそれぞれが絡み合っています。

  • 与えられたものでとりあえず何とかしようとする
  • 手段自体をカスタマイズしようとはしない
  • 敢えて他人と大きく異なるものを使おうとは思わない。周りと同じ、最大公約数的に分かりやすく標準化されたプラットフォームを使う

一番上は簡単です。多くの日本人は、とりあえずトップページとしてYahoo!があたえられ、それに大きな問題が感じられないから、それを使い続けているのです。

また、実際問題として、最初にYahoo!とGoogleが与えられたとしたら、多くの日本人はYahoo!を選ぶでしょう。

このあたりは、日本と欧米のテレビのチャンネル数の違いに関係がある気がします。

基本的に欧米はテレビのチャンネル数が膨大にあって、そこから自分の見たいチャンネルを選択、購入しないといけません。逆に日本は、チャンネル数が限られてはいるのですが、(地域によって違いはありますが)ほぼ共通のチャンネルの組み合わせが与えられています。

日本では、なんとなくチャンネルを回してみて、面白そうな番組があったら、それを垂れ流しておく感じです。逆に欧米は全チャンネルを回すだけで何時間もかかるので、自分である程度アタリをつけておかないといけません。

日本人は、よほど見たい番組が無い限りテレビのチャンネルを自分からはあまり選択しません。限られたチャンネル数のお仕着せのメディアに慣れてしまっているのです。

この「チャンネル」を「情報」に置き換えると、Yahoo!が日本的で、Googleが欧米的であることが分かります。

Googleの姿勢は、トップページを見れば分かるように、自分で情報を選びなさいという姿勢です。検索ボックスしかない潔いトップページは、多くの日本人が見た場合は、戸惑いを禁じえないはずです。それよりかは適度に情報が垂れ流されているYahoo!の方が心地よいはずです。

それに対してこういうことを言う人がいるかもしれません。
「Googleだってカスタマイズすれば、自分にふさわしい情報を『垂れ流してくれる』ようになるじゃないか」
と。勿論それは何の反論にもなっていません。

何故ならば、多くの日本人は、「多少使いづらくても、最初から準備されている万人共通のプラットフォーム」が好きだからです。そして、手段自体をカスタマイズする手間をかけようとは決して思わないのです。

実際そりゃそうです。ピアノを買ってきて、それを自分で調律してみようとか、キータッチを調整してみようとか、普通の人は思わないでしょう。

例えが極端すぎましたが、日本のパソコンユーザの大半を占めるライトユーザにとっては、インターネットが普通に見られれば(この表現はおかしな表現であることを承知で使っています)、問題ないわけで、他人より上手く使ってやろうとか思わないのです。

周りと同じようにインターネットを使えれば良く、ブラウザや検索エンジンを自分の好きなようにカスタマイズしたりすることに意味を感じられないのです。もちろんコンピュータが余り良く分かっていないから余計なことをしたがらない部分もあるのでしょうが、コンピュータやインターネット如きにそこまで煩わされたくないと言う姿勢はむしろ健全かもしれません。

だから敢えてFirefoxを使ってやろうとか、Googleを使ってやろうとか思う人は少ないのです。

上を踏まえると、「結局日本人はコンピュータリテラシーが低いんじゃないか」と言う意見が出てきそうです。それは大きくは間違っていません。ただ、厳密な正解は「コンピュータリテラシーが低い人がたくさんパソコンを使っている。」ということになりそうです。

日本の特徴として、識字率に見られるように、全体的なボトムアップの充実があげられます。身も蓋もない言い方をすると、「どんな馬鹿でも生きていける」ような社会が完全ではないにしろ実現されています。これは実際誇って良いことなのではないかと思います。多くの人が生きられた方が有効需要の獲得、社会の活性化に繋がりますからね。その分エリートが育ちにくいとの問題点もよく指摘されますが。

話を脱線させますが、普通の人の10倍稼いでいるお金持ちが、普通の人の10倍ティッシュを消費するわけではありません。そして、逆にティッシュを買うことすら出来ない貧乏人が出てくる状況になるとしたら、それはクリネックスにとって大きな痛手です。稼ぐことは決して悪いことではありませんが、富が偏在しすぎて、貧乏人が出てきてしまうとしたらそれは社会として非常に非効率であることは確かなのです。社会全体の底上げは非常に重要です。

話を戻しますが、日本においてコンビニはあれだけのサービスを展開しながら、誰にでも店員が勤まるようにマニュアルがこれでもかと整備されています。携帯電話だってめんどくさい設定もせずにすぐに誰だって使えるように出来ています。何度も言いますが、これは凄いことです。

i-Phoneがスゲー、進んでるとか騒がれてます。マニアはそう思うでしょうが、冷静に考えて、i-Tune立ち上げてしかも最新バージョンにアップグレードしてアクティベードだなんて、一般的な日本人がそんなしちめんどくさいことをするでしょうか? 多くの人は今の携帯電話のままでよいと思うでしょう。先ほど述べたように、手段のカスタマイズなんかに煩わされたいとは多くの日本人はなかなか思いませんから。

話を脱線させまくりましたが、このように、「誰にだってできる」と言うのは、日本におけるパソコンの世界でも例外ではありません。つまり、コンピュータを全然知らない人間が、平気でパソコンを購入し、使いはじめることが出来るような敷居が低さが実現されています。そして実際そういったユーザーが大半になっていると言う現実があります。

そういった人たちにとっては、尚更、Yahoo!のような、万人向けに標準化されたお仕着せのプラットフォームが使いやすいと感じるのでしょう。SNSにおいて日本ではmixiが一番流行ったのもこのあたりにも原因があると思います。

まあ、いろいろ書きましたが、結局のところ、Yahoo!は日本のインターネット界の「巨人」として既に地位を確立してしまっています。この「巨人」と言うのはプロ野球界のジャイアンツと言う意味です。一度「巨人」になってしまった以上、たとえどんなに体質が腐っていても、方針がおかしくても、トップに君臨し続けるのです。ロッテが逆転することはありえないのです。日本はそういう国です。

投稿者 Songmu : 2007年7月 2日 02:14