「エンジニアならリモートワークは簡単だ」と思ってはいけない
「強いチームはオフィスを捨てる」を読んだ。「小さなチーム、大きな仕事」でもそうだったが、
- とにかくやって見ろ。やれば分かるさ
- やらない理由がない
というふうにガンガン煽っていくスタイルが小気味良い。
とは言えしっかりリモートワークのリスクについても述べられていて、リモートワークは難しいなと思わせる内容でもあった。特に、メンタル面を含めた健康リスクに関しては相当気を使わないといけないように感じた。
リモートワークを実現する上で大事なポイント
個人的に大事だと思ったのが以下の2点。
- 信頼
- 自由と規律
相手をとにかく信頼して、自由と裁量を与える。
信頼された側は信頼に応えようとする。ただ、自由を与えられた場合に上手くいかないことがある。そこで、決まりをお仕着せてしまうのではなくて、本人が規律を決めるようにする、それまで待つのが大事なのだろう、と感じた。
例えば、始業時間は会社が決めるのではなく、本人に決めてもらう。もちろん決める必要すら無いのだが、始業時間を決めたほうがパフォーマンスが出ると思った人は自分で決めてしまえばいい。
そのように働く上での自分なりの規律が固まるまでにはある程度時間がかかるだろうが、それまで信頼して待つ姿勢が大事なのだろうと思う。
自由を与えられた上で自分で規律を確立するのは時間が掛かるが、自分が決めた以上それにメリットが有ることがわかってるのだから守るだろうし、逆に柔軟に変更することも可能だという利点もある。
メンバーのパフォーマンスが出ていない時は、それを責めるのではなく、相手を信頼しているであれば何故その人がパフォーマンスを出せていないのかを一緒に考えるといった発想になるのだと思う。
リモートワークの利点
リモートワークは単にメンバーが働きやすくなるだけではなく、会社(チーム)にとっても利点がある。それは以下の様な点だ。
- 自律的に規律を作ったチームは強い
- オフィスがなくても働ける強さ
- 否応なしに情報や業務プロセス可視化の必要に迫られる
前の項でも述べたとおり、個人やチーム自体で規律を決めるので、規律を守るモチベーションが高く、逆に変更も柔軟である。これは非常に強力に働くことは疑いないだろう。
オフィスがなくても働ける強さと言うのは、例えオフィスが倒壊しても理想を言えば業務に滞りが無いということだ。
そして、リモートワークをしていると、否応なしに情報や業務プロセス可視化の必要に迫られる。誰がどのような業務をしているかがすぐに分かるようになっていた方が良いし、ビジネスを意思決定する上で必要な情報が人によって偏りがあってはいけない。
誰が何をやっているかがわかると、相談相手も分かりやすいし、誰かが急に離脱した時のフォローもスムースになる。また、情報をオープンにフラットに開示することはメンバーが一番モチベーション高く働けるコツの一つでもあるように思う。
情報をオープンにすること。業務プロセスを可視化することの難しさ
ただ、リモートワークを持続する上で、一番難しいのがこの点であり、そして実は「エンジニアは特に難しい」という逆説があるように思う。
エンジニアは多くの情報を握っていて、見られる立場にもあるので、それらを見える化するのは逆に大変である。それらを抱え込んでしまって、その人がいないと業務が回らない、サービス開発がスケールできないといったこともよく起こるのは御存知の通り。また、エンジニアの業務は非エンジニアに説明するのが難しいことも多い。ソフトウェアの複雑度が増している場合はエンジニアにすら説明が難しいことさえある。
そういったこともあり、エンジニアが持っている情報をオープンにし、業務プロセスを可視化することは難しい。最近デプロイの通知やgithub上でのレビューなどが話題に上るが、これらはそういった話とも関係がある。そこに問題意識を抱えているエンジニアも多いのだと思う。
ここに関しては、一つ一つやっていくしかないと思う。ただ、危険なのは「エンジニアはリモートワークがやりやすい」という言説に惑わされることだ。これは恐らく非エンジニアの人の多くがそう思っていて、それに流されてエンジニア自身もそう思ってしまっていることが多いように思う。
非エンジニアからすれば「リモートワークをする上での技術が揃ってきている」から「技術を使いこなしているエンジニア」はリモートワークがやりやすいのではないかと誤解するのだと思う。実際自宅からサーバーに入って作業してるじゃないかと。
ただ、実際には以下の様な事実がある。
- 技術を作る側であるエンジニアは技術を使うのが得意だとは限らない
- ソフトウェア開発は複雑であり、実はコミュニケーションが大事である
なので、エンジニアはリモートワークがやりづらいということを自覚しつつ、周りにも理解してもらってその環境を整えていく必要がある。
大変だが、リモートワークが可能な環境を作ることはその労力に見合ったメリットがある。その辺は本を読んでいただきたい。
採用の話
とは言ったものの、身も蓋もない話をしてしまうと、本に書いてあるようなことは「優秀な人の集団」じゃないと実現できない。そういったことは文中にも見られる。つまり「採用をものすごく慎重に、大事にしている」ということだ。例えば前メンバーと話してもらうと言ったことは「小さなチーム」だからこそ成り立つわけであって、大きな規模になってくると色々難しいと感じた。採用ってのはものすごく大事だし難しいなとは思います。
まとめ
「強いチームはオフィスを捨てる」は原書タイトルは"Remote"らしいが、単にリモートワークをするための本ではなくて、リモートワークを実現することは強いチームを実現することだという話になっているのでおすすめ。
そして、エンジニアのリモートワーク実現は難しい。文筆業とかのほうがよっぽど楽だという僕の持論の話をしました。