おそらくはそれさえも平凡な日々

41歳のエンジニア、マネージャーからICへのキャリアチェンジ

最初にお断りしておくと、このエントリは驚くほど僕固有の私的な話に終止するので、他の人の参考にはならないでしょう。

ICというのはIndividual Contributorの略で、最近だとHashiCorp創業者のあのMitchell Hashimoto氏が、HashiCorp社内でICになるというのも話題になりました。日本でも、こにふぁーさんがそういう動きをしていたりして、ちょいちょい聞くようになってきた印象です。

今回の僕の転職は、言ってしまえば、自分が培ってきたソフトウェアエンジニアとしてのスキルを活かして世界の舞台で戦いたいという気持ちを抑えきれなかった、という幼稚な理由です。自分が求めているものがLaunchableにはあるように感じて入社しました。

振り返ってみると、最近の自分の転職における決め手は「自分を一番必要としてくれるところ」という側面が強かったと感じています。その結果、自分を必要としてくれる様々な新しいチャレンジが次々とやってきて、マネジメント・開発両面で良い経験を積むことができました。その選択には満足しています。

しかし、今回は、もしかしたら自分を必要とはしないかも知れないけど、純粋に技術的に面白そうでチャレンジングで憧れる、そんな企業を自分で選択しました。

実は、前職や前々職に入った頃、そういう軸で他に気になっていた会社はありました。それはTreasure DataだったりFastlyだったりです。それらの企業に本当は行きたかったんだ、とは思いません。ただ、それらの会社に魅力を感じつつも高嶺の花のように感じて尻込みしていた自分がいた、というのは事実です。

感じていた伸び悩み

ここ数年、事業、プロダクト、採用、チームビルディングを含めたマネジメント的な立場と開発者を兼任することが多かったのですが、そこでマネジメントにせよ開発者にせよどっちつかずで薄々伸び悩みを感じていました。忙しいと感じてしまっていた分、手持ちの駒でなんとかしてしまって、新しい技術やマネジメントスキルの習得を疎かにしがちでした。

それは反面、日本の多くのスタートアップ界隈くらいの、ある程度のサイズのビジネスでは手持ちの駒でなんとかできるスキルを身につけたと勘違いできるくらいにはなったということでもありました。なので、このまま日本のエンジニアコミュニティの中で感じ悪く偉そうにして、それで生き残ることはできるかもしない。でも果たしてそれで良いんだっけ?それに、日本でしか生き残れないかも知れない。

中身のない偉そうな大人になりたくない。40歳を越えて余計そう思うようになりました。それは、自分の同年代でそう見える人が増えてきて、他人事ではない危機感を持つようになったからでしょう。きっと僕自身も時にはそう見られているのだろうなとも。

最近よく言われるアンラーニングというものが必要なタイミングなのでしょう。

自分に足りないもの

自分に足りないものは考えてみると明白でした。英語とコンピュータサイエンスを含めたソフトウェアエンジニアリングスキルです。

日本のほとんどの職業エンジニアにとっては永遠の課題でしょう。なぜ、自分が外資のテックカンパニーを高嶺の花と感じて尻込みしていたかというと、結局、英語ができず、ソフトウェアエンジニアリングスキルも中途半端だと自覚していたからです。

とはいえ、悲観していたわけではありません。自分の英語力でもドキュメントを読んだりGitHub上でやり取りする分にはそれほど困らないし、エンジニアリングスキルもビジネス上の課題を既存のソフトウェア、ツールを組み合わせて解決する上ではそこまで問題には感じていなかったからです。

同時にそれらの課題から目を逸らしていたというのも事実です。技術カンファレンスで海外のゲストが来たときに英語で思うようにコミュニケーションが取れずに残念な思いをしたり、GAFAのコーディング面接の話などがネットを賑わすたびに「こりゃ自分には無理だわ」と感じたりして、その時は一時的に課題を思い出すのですが、数日後には忘れている。自分に甘いし、切実に困っていないから、スキルが足りないと分かっているのに埋める努力をろくにしないのです。

困ってはいないものの、それらのスキルが上がればキャリアの選択肢も広がるし、もっと面白いチャンスや課題もやってくるのだろうな、というのも朧げに感じていました。「数学が何の役に立つんだ」みたいな笑い話が典型的ですが、知識やスキルが無いからこそ困難を感じない、というのはよくある話です。

とはいえ、現場叩き上げの人間にありがちですが、自分は器用に色々できるタイプではなく、プロダクトや事業に熱中する中で能力を磨いてきたし、そうじゃないとなかなか身に着けられない性分です。なので、それらのスキルが強く求められる環境に身を投じないと本気で身につけようとしないだろう、とも思っていました。

グローバルマーケット

元々自分は上昇志向も強くないため、グローバル志向も薄かったのですが、社会人経験を重ねるにつれて、スケールの大きなビジネスは社会的意義も大きく、面白そうだと感じるようになってきました。自分のスキルをそういった場で活かしたいとも。

また、現実問題としてソフトウェアエンジニアの給与の違いがよく話題になりますが、それは多くの場合マーケットサイズの差です。ソフトウェアエンジニアリングはレバレッジを効かせて成果を出すところに価値の源泉があるわけですが、無限にレバレッジを効かせられる訳ではなく、マーケットサイズに律速されてしまう。だからマーケットサイズの差が如実に待遇に現れてしまいます。西海岸と日本の差もそこが大きい。

それもあって、自分はやはり大きなグローバルマーケットで戦ってみたいと思うようになってきました。また、これは川口さんに言われてハッとしたのですが、日本でビジネスを始めた時に国内で足場を固めてから海外に出ようとすると、国内事情に引っ張られて逆にそれが足かせになる、というものです。これは個人的に思うところが色々ありました。また、ビジネスだけではなく、自分が作ったOSSでも国内で多少評価されても、それをどうやって海外に広めればよいのかわからない、という似た課題意識もありました。

では、どうやって海外に打って出ればよいのか。答えはシンプルです。「最初から海外でやればいい」。もちろんそれも誰にでもできるわけではありませんが、Launchableはそれをやっています。そこにかなり惹かれました。

また、大きい市場で戦いたいといえども、従業員数の多い企業は自分は性に合わないだろうというのもあり、やはり少人数スタートアップで、ものづくりの醍醐味を味わいながら自分の力でプロダクトを急成長させたい、という意気込みも強く持っています。

余談ですが、子供が生まれたことによるグローバルに対する心境の変化もありました。人生100年時代なので自分の子供達は2120年位まで生きるらしい。その頃日本がどうなっているかわからないので、彼らに日本以外の選択肢も取りやすくしておきたい。なので、僕自身も世界で戦えるようにしておく必要性を感じたというのもありました。

本当にやりたいことは何だったんだっけ

中年の自分探しみたいな話になりますが、自分がWebの世界に入った頃を思い出すと、雲の上の世界にいるようなエンジニアにあこがれて、そうなりたいと思って入ってきたわけです。そして、キャリアを重ねる中で、レベルの高いチームの中でプロダクトづくりに熱中する楽しさも知りました。

ただ、そんな中、最初に憧れたようなレベルの高いエンジニアになれているかというと、全然そうは思えていません。レベルが上がれば上がるほど、上の人との差を痛感する、その繰り返しです。

いつしか身の程を知り、自分には行けない世界があると諦観するようになりました。身の程を知るのは大事です。誰もが伝記に残るような偉人になれるはずもないのですから。与えられたカードを使ってベストを尽くすのが人生の楽しみ方です。

ただ、燻っていたものもありました。それに、自分がEM的な動き方をする中でも、日本の中でEMとしてそれなりにやれたとしても、世界で戦えるようなEMになれるイメージが沸きませんでした。そして、チームの力がマネージャーの力に律速されてしまうことにも強いジレンマを感じていました。何かしらの変化を求めていたのです。

また、前職で、カタコトながら業務上英語を話す増えてきたのもあって「もしかして、頑張ればまだ英語環境で仕事できるんじゃないか」とか思ったりもしていました。

Launchableの魅力

そこに現れたのがLaunchableです。僕は仕事をする上での大前提として「ビジョナリーな経営者やプロダクトマネージャーと一緒にやりたい」という気持ちがあります。Lauchableはそれを満たしています。また、これまで書いたことに付随するような、以下の条件も満たしていました。

  • 英語が公用語
  • レベルの高いエンジニアリング環境
  • グローバルマーケット

それらに加えて魅力を感じる以下のポイントがありました。

  • 少人数スタートアップ
  • 技術者向けプロダクト
  • 日本の血が入っている

この環境で改めてICとしてやることが、エンジニアとしてもビジネスパーソンとしてもより成長できるのではないかと直感しました。今更、情熱プログラマーの「一番の下手くそ」を求めるのも何ですが、それに近い環境で修行し直しができるのは魅力的です。

また、桑田真澄が、引退前にメジャー挑戦をしてパイレーツに行きましたが、ステージや次元は違えど、似たような境地かも知れません。

ただ、そんな新人みたいだったり、引退前のような気持ちでいるわけでもありません。ソフトウェアエンジニアは長く続けられる職業だと思っているし、そんな中で自分は結果を出せるだろう、という自負も持っています。

そう思いがあって、Launchableに応募して、ありがたいことに内定を頂いたので入社することにしました。その辺りの話はまたいずれ。

採用情報

Launchableはエンジニアを募集しています。ここまで読んでくださった奇特な方は、きっと興味を持ってくださっていると思うので、是非連絡ください。

https://www.launchableinc.com/careers

TwitterのDMでの連絡も歓迎です。Meetyなども近々始めようと思っています。

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2021-11-17T09:57:18+0900

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