ソフトウェアエンジニアという人生の選択肢
最近、Webエンジニア界隈で、共通項を感じる印象的な出来事があった。具体的には以下の2件。
- ゆーすけべーがHonoを作ったこと
- おぎじゅんさんが職業プログラマーに戻ってきた(きていた)こと
共通項はそれぞれ長めのブランクがありながら、ソフトウェアエンジニアリングの世界に戻ってきて一線級以上の活躍をしているということだ。二人とも僕と同世代かそれ以上の年齢でもある。これは勇気と希望をもらえることだ。
もちろん彼らの能力の高さゆえに第一線に戻ってこられたのかもしれない。ただ、どちらにせよ、別のことに興味があれば、職業エンジニアを離れて、フォーカスする期間があっても良いと言うことだ。能力不足ならなおさら中途半端になるよりフォーカスしたほうが良いとも言える。
それに多分戻ってこられる。ゆーすけべーの様に世界的エンジニアになるのは難しいにせよ、別に満足に働けるくらいには戻せるのではなかろうか。
技術は日進月歩で、キャッチアップを怠ると途端に置いていかれる不安があるかも知れない。でもそこにしんどさを感じ始めているのなら無理しないほうが良い。それに、そんな厳しい業界だったら新しい人が誰も参入できなくなって、消え去ってしまう。実際には優秀な若者が新たにどんどん業界に入ってきてくれている。
もちろん、若い人の方が我々よりも優秀であるという事実はあるが、経験や結晶性知能で勝っている部分もある。AIなどのテクノロジーに補助してもらえる部分も増えている。眼鏡がそうであるように。何より、いくらAIが発展しようと、ソフトウェアエンジニアは足りない状況が続くので、少ないパイを競って蹴落としあう必要はなく、寧ろ皆で高めあっていく必要がある。
人事になりました
私事ですが、10月から人事に異動しました。正式には「株式会社ヘンリー 経営管理部門 人事本部 VP of Engineering」というタイトルです。
私はなんだかんだでこれまで兼務ベースで約10年エンジニア採用やエンジニアリング組織開発にも携わっていて、知見やノウハウもあるのでフォーカスする期間があっても良かろうというところ。
今後はエンジニアとしての発信だけではなく、採用や組織的な発信も増やしていければ良いかと思っている。エンジニアとしての経験を活かし、人事関係のノウハウを抽象化してパブリックに公開するというのをもっとやりたい。
なので、今はプロダクションコードを書いていないが、またいずれコードを書く仕事に戻る気持ちは全然ある。今、どういう役割の帽子をかぶって、どこにフォーカスするかが大事。必要に応じて柔軟に帽子をかぶり変えて行きたい。
冒頭の話もあって、いつだって戻ってこられる安心感が強まったから別のところにフォーカスしようと思えたのもある。元々、プレイングマネージャー否定派ではあった。プレイングマネージャーやってた時期も長いけど。
家族や子育てにフォーカスしたって良い(当たり前)
別に子育てに限った話ではないが、結婚や子育てを機に、以前ほど趣味のエンジニアリングに時間や情熱を割けなくなっていることを不安に感じている人が結構見られる。私も感じることはある。
でも別に働くことや趣味のエンジニアリングを緩めて、家族や子育てに集中する時期があっても良いと思う。それは間違いなく人生を豊かにする。私自身も最近それを強く感じるようになった。自己正当化バイアスかもしれないが、そんなバイアスなら歓迎である。
怖いのは情熱が枯渇すること
結局怖いのは情熱が枯渇すること。例えばエンジニアリングへの情熱が以前より失われているとかそういったこと。枯渇させないためにも、休んだり、気分転換で別のことをやったり、フォーカスしてみたりすることが大事。
何かにフォーカスすることで情熱が生まれることもある。そして何かにフォーカスしないとなかなか情熱は生まれづらい。その結果として、エンジニアリングへの情熱が失われたとしても、他のことに情熱を持てればそれでも良いとも言える。中途半端に色々なことをこなすことに終始して、消耗してしまうのが巧くない。
自分の人生のリソースには限りがあり、やりたいことを全部やれないもどかしさを抱えながら生きる人も多い。私もそう。寧ろそういう人が幸せと言える。そういう中でフォーカスポイントを変化させながら情熱を持ち続けることが幸せに生きるコツなのだと思う。選択と集中である。
「選択と集中」における選択の重要性
「選択と集中」はよく言われる言葉で、集中・フォーカスすることの大事さはよく説かれるが、それと同じように選択できることも大事である。
歴史上の選択と集中の失敗例として、発展途上国が一部の一次産品に生産を集中した結果、余計貧困が進んだ、と言う話がある。いわゆるモノカルチャー経済である。選択し直せる選択肢を失って袋小路に入り込んでしまったという点が示唆的である。
人生でも事業でも、その時その時のフォーカスポイントを定めることはとても重要だが、それと同時に定期的に選択し直せるように選択肢を確保しておくことも非常に重要なのだ。
ソフトウェアエンジニアは人生において有力で魅力的な選択肢だと思う。私自身もそういう選択肢を常に持っていることは幸せだし、人生を充実させてくれるものだと確信している。万人に向いてるかどうかは分かりませんが、オススメです。