TaskMD Shelf - 積極的棚上げを由とする怠惰なタスク管理
フリーランスになって、複数の案件を同時に進める必要が出てきたこともあり、タスク管理方法を見直した。何なら手法やツールも自作してしまおうと考えた。何かを始めるときに、まず道具から作り始めてしまうのは自分らしい振る舞いで面白い。
これをTaskMD Shelfと名付け、仕様を公開した。
https://github.com/Songmu/TaskMD-Shelf
これは、1 タスク = 1 Markdownファイルとして管理する手法。各ファイルはTaskMDと呼び、それに最小限のメタデータ設計と運用ポリシーを定めたもの。単純なアイデアで、類似の方法でやっている人も既にいるだろう。
既にこれでタスク管理をしていて上手く回っている。ObsidianのDataviewプラグインがとにかく役に立っているのだが、その辺りの話は別途。
怠惰な自分でも続けられる手法
個人的に、強すぎる制約があるタスク管理手法は長続きしづらく、続けていてもどこかで躓くと途端に折れて諦めてしまうことが多かった。
なので、怠惰な自分でも続けられるシンプルなタスク管理を目指した。
具体的には「今やらなくて良いことは積極的に棚上げする。ただし、見直し日は必ず定める」、という「積極的棚上げ」を基本戦術とした。
個人タスク管理に求めること
個人タスク管理に求める事は以下である。
- 今、やるべきことを絞って明確にしたい
- WIP制限がかかるようにしたい
- 関わっているタスクを失念しないようにしたい
- 半年後のタスクも、それまでは忘れておきながら適切に思い出したい
- アイデアややりたいことも思い出せるように全て記録しておきたい
- 仕事も家事も趣味も
GTD(Get Things Done)インスパイア
古来から提唱されている優れた手法であるGTDが目指す所も近い。実際GTD本を改めて読み返して、かなり参考になった。ただ、以前、GTDの実践を試みたこともあったが、その時にネックだったのが、とにかくタスクリストのメンテナンスに労力がかかることである。
「ネクストアクション」「備忘録ファイル」「プロジェクトリスト」「いつかやるリスト」etc., 確かにどれも重要だ。これらを「週次レビュー」で、しっかり定期的に時間をとってメンテナンスする必要がある。そして、週次レビューを怠ると、途端に本当に一瞬でシステムが崩壊するのだ。なので長続きさせられなかった。
ベースの哲学は優れているので、ツールや仕組みを工夫して手間を減らし、同様のことを実現したい。
なので、TaskMD Shelfでは全てのタスクをセマンティックプロパティを付与したテキストファイルを使ってデジタルで一元管理する。フィルタやビューを活用して、複数のリストのメンテナンスを不要にする。
積極的棚上げ戦術による自然なWIP(Work in Progress)制限
WIP制限はとても重要だ。そして「言うは易し、行うは難し」の典型例でもある。その制約を守れれば良いが、現実的にはとても難しい。これも心を折ってしまうような強すぎる制約になりがちである。
WIP制限は理想状態であり、そこに向かっていける仕組みが重要である。WIP制限を課すのではなく、結果としてWIPが制限されている状況を作るのである。
ここで「積極的棚上げ」戦術である。今日やらないと決めたことは「棚上げ」して、机の上(実行中リスト)から片づける。ただし「見直し日」を必ず設定して、その時に再開するか、再度棚上げをするかを決める。それだけのことだ。
レビューやメールの返信待ちなど、待ち状態のタスクも棚上げする。ここで重要なのは、それらにも必ず「見直し日」を設定することだ。これによって適切に催促できるし、有耶無耶になって立ち消えてしまうことを防げる。
TaskMD Shelfでまず実現できること
これらを踏まえて、TaskMD Shelfでは以下のようなことが実現できる。
- 小さく始められること
- とりあえず一つのTaskMDを作るところから始められる
- タスク登録に手間がかからないこと
- 最低限、タスク名たるファイル名とステータスだけ決めれば良い
- 全てを保管しておけること
- タスクだけでなく、アイデアややりたいことも全て雑に記録しておける
- こまめに整頓できること
- 大掛かりな棚卸しをせずとも、空いた時間に順次見直しができる
これらのTaskMDファイル群を管理するために自分で自由にツールを作っていくことができるが、取り急ぎ、ObsidianのDataviewプラグインが非常に便利で、これを使って進行中タスクリストなどのビューを作成している。
プレーンテキスト指向
TaskMD ShelfはNotionのデータベースなども使うこともできる。様々なビューも作れるのでとても便利だろう。
しかし、プレーンテキストファイル群で管理することをお薦めしたい。それがまさしく、タスクの棚たるTaskMD Shelfである。
Obsidian CEOであるSteph AngoのFile over appの哲学にとても共感しているが、データフォーマットが決まったファイルが手元にあることはとても自由だ。IndieWebの思想に通じる物もある。個人が一生に抱えるタスクのデータ量なんて大したことはない。自前で充分に管理できる量だ。Gitを使えばバージョン管理もできる。
AIに支援してもらう
自分の管理下にTaskMDを置けば、AIに学習もさせやすく、支援も受けやすくなる。
今回、TaskMD Shelfを作るにあたってまず仕様をまとめたのは、根幹となる基本のデータ設計をしっかりやるSoR的な発想もあるが、それと当時に、AI支援を受けやすくすることや、ツールを作ってもらいやすいようにするという狙いもある。実際、このTaskMD Shelfを操作する為のCLIやMCPもClaude Codeに書いてもらっている。それらは公開するつもりである。
将来的には、TaskMS Shelfの内容を学習したAIが、次にやると良さそうなタスクを提案してくれたり、滞っているタスクのケツを叩いてくれたり、もう実現が不可能そうなタスクをそっと諦めさせてくれたりすると嬉しいと思っているし、それが出来るようになるとも考えている。
まとめ
しかし、仕様をまじめ腐って書いたらかなりの分量になってしまった。恐らくタスク管理手法公安者全員が「省力で長続き出来る方法」を当初は志向、模索しながらも、結局重厚になってしまう歴史を辿ってきたのだろうな、というのを体感した。
今回TaskMD Shelfを考えるに当たって、自宅にあるGTD本を含めたタスク管理手法の本を読み返すとともに、新たに気になっていたタスクシュートの本も何冊か読んだ。改めて非常に参考になった。タスクシュートからは一日にやることを絞ることや、実際に「できた」ことを記録すること、そこから成功体験を積み重ねることが重要だと再認識した。
その辺りのリサーチや、実際にTaskMD Shelfを運用してどうだったかは、大吉祥寺.pm 2025で話したいのでプロポーザルを提出する予定です。